吉徳これくしょん vol.03

 
御所人形宝船曳き

 つややかに磨き上げられた胡粉地の白い肌、丸々とした肢体。幼児のすこやかな愛らしさを象徴したような御所人形は、江戸時代の中ごろ、京都で創始されました。その名は、西国の大名が京都通過の折、これを御所より賜わったり、勅使下向の際、大奥への手土産にこれを携えたりしたことに由来します。しかし、この呼称が定まったのは比較的近年のことで、江戸時代には大内・頭大(ずだい)・三つ割り(三頭身の意)・白肉・白菊・お土産・拝領・伊豆蔵人形などと呼ばれていました。

  御所人形の発祥は詳らかではありませんが、祓いに用いた這子(ほうこ)の人形化とも考えられ、また嵯峨人形の一種で「裸嵯峨」と呼ばれる人形の影響が濃いともいわれます。

  素材は木(桐)、桐塑(練りもの)、張子などで、形態は這い這いや立ち姿、「つくね」と称する座り姿の小型のもの、ポーズをつけたもの、能装束をまとったもの、公家や武家の風俗に仕立てたものなど、多様を極めます。

  古品はいずれも清らかな気品に満ち、まさに日本の人形美の一頂点をなしていますが、反面、遺されたものの完成度があまりに高いこと、また技術的に難しいことなどから、その製法を伝承する人形師は今日、ほとんどおりません。

  本品は、吉祥をあらわす宝船と力強い造形とがいかにもめでたく、まさに慶事にふさわしい佳品といえましょう。

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