吉徳これくしょん vol.18

 
菖蒲太刀

 端午の節句には、古くから宮廷で騎射(うまゆみ)が行なわれるなど、武勇に関する行事がつきものでしたが、民間でもこれをまねて、 男の子たちは小弓を射ったり、「印地打」(いんじうち)と呼ばれる石合戦をしたりすることが中世から近世初頭にかけて盛んでした。

  そうした場において、子供たちが腰に佩び、打ち合った玩具用の模造刀を「菖蒲太刀」(しょうぶだち)または「菖蒲刀」(しょうぶがたな・あやめがたな) といいます。菖蒲の葉の形がその原形とされていますが、のちには歌舞伎で用いる太刀などの影響を受けたのでしょう、鍔や鐺などを大きく誇張した独特の形が作られました。

  江戸後期になると実用の玩具ではなく、観賞を主目的とした、より装飾的で美麗なものも作られるようになり、 こちらは五月飾りとして昭和戦前まで広く親しまれた存在でした。その多くは木地に胡粉を塗り、極彩色を施したもので、端午の節句にふさ わしい勇壮で華やかな飾り物です。

  本品は形の美しさとともに、濃淡の三色で塗り分けられた幾何学文様が珍しく、遺例のなかでも特に優れた一品といえましょう。

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